【研究背景】
 ALLHATVALUEなど大規模臨床試験において、脳心血管イベントの抑制には厳格な血圧コントロールが重要で、カルシウム拮抗薬(Ca抗薬)はそれを実現する、優れた降圧効果を持つことが示されています。
更に、Ca拮抗薬は、脳卒中や冠攣縮性狭心症の多い日本人に適することから、わが国の高血圧治療で広く処方されています。
 一方、わが国の高血圧治療ガイドライン(JSH2000)では、高齢者高血圧の降圧目標が、60歳代140mmHg以下/90mmHg未満、70歳代150160mmHg以下/90mmHg未満、60歳代160170mmHg以下/90mmHg未満と、年齢ごとに幅を持たせた設定をしていたことに加え、過度な降圧が、高齢者の脳梗塞や痴呆などの危険性を高めると警戒感から、Ca拮抗薬以外の降圧薬による、緩徐な降圧も広く行われています。
わが国におけるCa拮抗薬を含めた降圧薬による血圧コントロール状況のデータは、2003年に実施されたJ-HOME研究 Ohkubo T. et al.: Hypertens Res 2004; 27:755-763. Ohkubo T. et al.: Ther Res 2003; 24(9):1849-1855.)で明らかになりました。しかし、Ca拮抗薬を含まない降圧治療による血圧コントロール状況に関しては、未だデータが集積されていません。
【研究目的】
 J-HOME-ElderlyThe Japan Home vs. Office blood pressure Measurement Evaluation in Elderlyは、わが国におけるCa拮抗薬以外の降圧薬による血圧コントロールの現状と、日本人における血圧コントロール状況と臓器障害および合併症との関係を明らかにすることを目的に、Ca拮抗薬以外の降圧薬で降圧治療を受けている患者さんの、外来血圧および家庭血圧のコントロール状況を検討し、更に同じ患者さんについて3年間の追跡調査を行います。
【指導および解析主幹】
東北大学大学院臨床薬学 教授 今井 潤
【研究参加医師】
全国の診療所、クリニックにおいて高血圧治療を行っている実地臨床医
【調査方法
対象患者 以下の@〜Bまでの条件をすべて満たす患者さん
@本調査へのデータ提供について口頭同意が得られた、60歳以上の本態性高血圧患者さん
A上腕型の家庭血圧計による起床時および就寝前の家庭血圧、来院時の外来随時血圧を測定可能な患者さん
BCa拮抗薬を使用せず、他の降圧薬により、2ヶ月以上降圧治療を受けている患者さん
 [除外基準]  ・第1次調査前2ヶ月以内にCa拮抗薬による降圧治療を受けていた患者さん
           ・現在、降圧薬投与による介入試験に参加している患者さん
目標症例数 3000例 
調査実施期間(予定)および内容 [スケジュール]
@第1次調査(200412月〜200511月)
 処方降圧薬の種類および血圧コントロール状況を把握することを目的に、外来血圧、起床時家庭血圧、就寝前家庭     血圧、その他の調査項目(詳しくは「調査票.pdf参照)を調査します。第1次調査終了後、外来血圧が140/90       mmHg以上、または家庭血圧が135/85mmHg以上の患者さんには、JSH2004に基づき、積極的な降圧治療を推奨します。
A第2次調査(20066月〜20069月予定)
 第1次調査終了時から69ヶ月後の、外来血圧、起床時家庭血圧、就寝前家庭血圧、降圧薬処方の変化、その他調査項 目等について調査します。第1次調査結果との比較により、JSH2004がどの程度、実地臨床に反映され、血圧コントロール  状況が変化したかを調べます。
B第3次調査票(2008年実施予定)
 第1次調査終了から約3年後に、脳卒中、冠動脈疾患などの合併症の発症、その他の調査項目について調査します。第1  次調査、第2次調査の結果と合わせて、血圧コントロール状況の変化、合併症、臓器障害進展・転帰との関連を分析しま   す。
【調査結果の発表】
調査結果は、東北大学にて集計・分析し、学会で「J-HOME-Elderly研究」として発表、論文投稿を行います。
【倫理的側面
本調査では、治療方法、使用する薬剤の選択等に関しては、すべて主治医の判断に任せられます。また、本調査で提供していただく採血等による検査データは、保険診療の適応範囲内の日常診療の中で行われた検査結果を報告していただきます。従って、本調査参加による医療機関または患者さんに通常の診療以上の医療負担が生じることはなく、診療内容も日常診療となんら異なるものではありません。本調査は、東北大学医学部倫理委員会による審査のうえ、承認を得ております。

【個人情報の保護】
 本研究で得られた記録票は、厳重に管理され、データの管理を行うJ-HOME-Elderly事務局ならびにデータ解析を行う東北大学大学院臨床薬学教室、および医薬開発構想寄附講座の担当者以外の目に触れることは一切ありません。また、本研究で調査される対象の患者さんおよび調査票は、全てランダムに割振られた認識番号により管理され、主治医以外が患者さん個人を特定することはできません。したがって、結果の発表等に際しては、個人情報が公表されることは一切ありません。